運用コストは“開発の後始末”などではない
システム運用と聞いて思い浮かべるものは、人によって様々だと思います。実際、システムを正常に動作させるための定常作業からクリエイティブな運用法の考察に至るまで、システム運用が内包する概念は数多いのですが、ビジネスの観点からすれば、システム運用は「投資」です。もちろん、システム開発も「投資」となります。
システム開発においては、必ずコストや期間などが見積もられ、投資効果、あるいは費用対効果が十分であると判断された場合にのみプロジェクトが動き出します。つまり、システム開発を投資と見なすことは当然であるとも言えるでしょう。しかし、システム運用はどうでしょう。大抵の人が運用コストは“必要経費”だと思っているのではないでしょうか。
「開発」と「運用」のコストを考えてみると、当然最初にかかるのは開発コストです。要件定義、設計、実装、テストの段階では、当然ながらバリュー(リターン-投資額)はマイナスです。システムが稼働を開始することをカットオーバーと言いますが、カットオーバーの時点では投資額が最も膨れ上がり、バリューがまったくない状態になっています。つまり、開発コストを回収し利益を出すためには、カットオーバー後の「運用・保守フェーズ」で頑張らなくてはなりません。投資の観点から言えば、このフェーズで損益分岐点を超え、次の投資までにどれだけのリターンを得られるかが重要になります。
このように考えると、「開発コスト」と「運用コスト」は共に重要であることがわかります。開発コストが膨大であれば、回収までに時間がかかります。運用コストが増大すれば、回収のスピードが遅くなります。そして、システムには「利用期間」という制約があります。利用期間中にコストが回収できなければ、そのプロジェクトは失敗の烙印を押されるでしょう。つまり、運用コストを「開発が終わった後の単なるルーチンワーク」のように考えてはいけません。投資活動の成否を決める重要な要因だと捉えるべきです。
なお、「開発のコストを圧縮すると運用コストが跳ね上がることがある」などと言われることがありますが、この場合に発生しているのは、急造のシステムが使いにくかったり、不具合が頻発するといった、開発フェーズの“後始末”としてのコストです。システムを運用するために必要なランニングコストとは明確に異なりますので、注意しましょう。