“保守”が“開発”と同じ重要性を持つ時
「アプリケーション保守」と言われた時、何を連想するでしょうか?
バグ潰し、要件定義(実際の作業の前に実装すべき機能や満たすべき性能などを明確にしていく作業のこと)を含む大規模な開発、細かな修正・改正……要するに、投資ではなく、経費として計算される“アプリケーションの変更”であれば、何でも「アプリケーション保守」と呼んでいるのではないかと思います。やや曖昧な言葉であり、細かな改善から大規模開発まで言い表せる便利な言葉でもあると言えるでしょう。
しかし昨今、この「アプリケーション保守」が新しい意味を持ちつつあります。それは、付加価値の高い「保守」が登場してきたからです。
「IT時代」から「IoT(Internet of Things)時代」になり、多くの企業ではすでに業務のIT化は終わっているでしょう。すると大規模な新規開発は必要なくなり、付加価値の高い“アプリケーションの変更”こそが重要になってきます。大掛かりなアプリケーション保守は、開発業務と内実は変わらない重大案件だからです。言い換えれば、今はシステムを“リフォーム”して活用する時代になっていると言えるでしょう。
ユーザー企業にとっては、このようなアプリケーション保守はもはや「中核業務」となるでしょう。既存のシステムを開発環境として活用し、必要とされるサービスをクラウドで素早く提供するといったことを実行している企業も多いはずです。
とは言え、ユーザー企業とベンダー企業では保守に対する考え方がまるで異なる場合があります。ユーザー企業は「料金が下がらない」「ベンダーの保守業務がのろい」と不満を口にし、ベンダー企業は「要件が定義されないと見積もれないのに、どうして適正な料金を設定できるものか」「要件がわからないのに事前に予見できるわけないだろう」と憤る。以前とは異なり、アプリケーション保守の付加価値が高まっているからこそ起こりやすい揉め事であるとも言えます。
しかし、クラウドを導入することで、こういった揉め事を回避することも可能です。例えば、IT基盤の運用についてはベンダー側が行う。ハードウェアなどの保守はベンダーが一手に請け負うのです。データ入力などの業務が必要であれば、別口のビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)などとして引き受ければいいでしょう。そのうえで、アプリケーション保守はユーザー企業に内製化してもらう。保守が大変なようであれば、細かな改善などはベンダーが請け負っても良いし、大規模なアプリケーション変更が生じた場合もベンダーが開発パートナーになってユーザー企業を助けてあげれば良いでしょう。
いずれにせよ、肝心なのは「アプリケーション保守」が持つ新しい意味を自覚することではないでしょうか。