「労多くして功少なし」のままで良いのか
一口にシステム運用者と言っても、様々なタイプがあります。当然、様々な悩みを抱えていることでしょう。元々はソフトウェア開発者だったのに、いつの間にかシステム運用を任されるようになってしまった。企画の仕事がしたかったのに、本流ではないシステム運用部門に回されてしまった……。
やったことのない人にはなかなか理解されないのですが、システム運用は大変な仕事です。例えばアプリケーション・サービス・プロバイダー(ASP)のようなサービスを提供している場合、業務は昼夜を問わず発生します。昼間は利用者からの問い合わせの電話に対応しなければならないだけでなく、夜もシステム異常などにより復旧作業に駆り出されたりするのです。サービスの評判は企業の評価に直結するので、手を抜けません。にもかかわらず「システムは常に正常に稼働するのが当たり前」と思われているので、なかなか正当な評価を得られない場合もあります。
様々な悩みを抱えるシステム運用担当者ですが、分類してみると次の4パターンになります。
- IT運用提供企業のシステム運用担当者(大企業)
- IT運用提供企業のシステム運用担当者(中小企業)
- IT運用利用企業のシステム運用担当者(大企業)
- IT運用利用企業のシステム運用担当者(中小企業)
ざっくり分ければ、所属組織は「運用提供企業」と「運用利用企業」の2つになることがわかります。
「運用提供企業」は、自社で構築したシステムやサービスを顧客に提供する企業。自社でシステムを運用する他、他社のシステムやサービスの運用を代行することもあります。
「運用利用企業」は、他社が構築したシステムやサービスを導入して利用する企業。当然、本業はシステム開発・運用ではないので、社内にはサポート窓口ぐらいしか存在しない場合があります。
「運用提供企業」では、運用担当者の仕事は本流の一つ。技術力やマネジメント能力を磨けば、経営幹部を目指すことも可能でしょう。
しかし、「運用利用企業」では、システム運用は生業と直接関係がありません。多くの場合は、利益を生まない部署と認識されているでしょう。それでも大企業であれば情報システムを扱う専門部署がありますが、中小企業の場合は他部署の人間や開発会社が兼任していることが多いのではないでしょうか。
経営側に注目すると、業績が良い時はシステムに投資もするが、業績が悪化すると出し渋るというケースが多々見られます。これは、人事部門や経理部門と同じく、システム運用部門は「コストセンター」だと認識されているからです。しかも、システム運用部門は歴史が浅いので、運用する人材が不足していたり、担当者の教育もおろそかにされがち。今やシステムは企業になくてはならないものなのに、経営陣の姿勢が定まらないケースが多いのです。ITILが注目を浴びるようになったのも、このような状況と無関係ではないでしょう。
しかし、状況は変わりつつあります。システム運用部門をないがしろにする大企業はコスト削減に苦慮し、厳しい競争の中で勝ち抜くのは難しくなってきています。中小企業も、システム運用部門を厄介者扱いするのではなく、経営に資する方向で考えなければならない時期に来ているのではないでしょうか。