「変化しないシステム」から「変化するシステム」へ
日々進化する統合運用管理ツールを使っている人はなかなか気づかないかもしれませんが、20世紀から21世紀に移行した辺りから、システム運用の構成・構造は大きく変化してきました。その変化の多くは「環境の変化」によってもたらされたものです。このコラムでは、一体何がどのように変わってきたのか、変わる環境の中でどういったことに気を付けていれば良いのか等について解説していきたいと思います。まずは手始めに、現在のシステム運用がどのような段階にあるのかをおさらいしておきましょう。
ほんの十数年前を思い浮かべてみると、「商用ツール」を組み込んだ機材を用いて「スタンドアローンなシステム」を使っていたのではないでしょうか。インターネットはすでにありましたが、今に比べれば回線速度はお話にならないほど遅く、ソフトウェアの多くは単体で用いられていました。通信ネットワークと接続すらせず、ワープロや表計算などの機能に特化して設置された機材もあったのではないかと思います。無線LANやWi-fiが当たり前になっている時代に生まれた世代には、実感することすら難しいでしょう。
基本的に1台のコンピューターは独立した機械だったわけですから、「1台のハードウェアに1台のサーバー」というのが当時の常識であり、どんなに大きなシステムでも中身を見れば独立したシステムの集合体だったわけです。ところが今や仮想化・クラウドコンピューティングの時代。複数のシステムが連携して動作するのが当たり前です。
同時に、最初は商用ツールしかなかったシステム運用の分野にもオープンソースが進出するようになりました。今ではすべてのシステムをオープンソースソフトウェアでまかなっている企業も珍しくはありません。
つまり、十数年前は商用ツールで「保障された環境」を構築し、「変化しないシステム」を運用していれば良かったのです。運用と言っても、システムは変化しないわけですから、定型的な操作=オペレーションを行っていれば事足りました。
ところが現在、状況は一変しています。システム連携が当たり前になり、複数の商用ツール・オープンソースツールを後から組み合わせることもあります。インターネット上にはAWSのような新しいサービスが立ち上がり、WEBの世界からシステムの更新を要求してきます。かつてはハードウェア・ソフトウェアの耐用年数がシステムの耐用年数となることもありましたが、仮想化・クラウド化が進んだ現在ではシステムは止まることがありません。
このような様々な「環境の変化」に対応し続けることが、現在のシステム運用では求められているのです。