ITシステムの運用において、トラブルや障害への対応は避けて通れません。しかし、その場しのぎの対応だけでは、同じ問題が繰り返し発生し、業務効率の低下やコストの増大を招きかねません。そこで注目されているのが「問題管理」です。インシデント管理との違いは何か?問題管理を導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか?本記事では、問題管理の重要性と効果的な実践方法について、詳しく解説していきます。
インシデント管理と問題管理の違い
インシデント管理とは
インシデント管理とは、ITサービスにおける予期せぬトラブルに迅速に対応し、サービスを早急に復旧させる活動です。例えば、オンラインショッピングサイトが突然アクセス不能になった場合、顧客の不満や売上損失を最小限に抑えるため、迅速な対応が求められます。
インシデント管理の主な目的は、ビジネスへの影響を最小限に抑えつつ、通常のサービス運用を可能な限り早く再開することです。この過程では、根本原因の追究よりも、一時的な対処方法の適用が優先されます。
効果的なインシデント管理を実現するには、以下のステップが重要です。
- インシデントの迅速な検知と報告
- 影響度と緊急度に基づく優先順位付け
- 適切な担当者への割り当て
- 暫定的な解決策の実施
インシデント管理は、顧客満足度の維持とビジネス継続性の確保に不可欠な活動です。適切なツールと体制を整えることで、効率的かつ効果的な対応が可能となります。
問題管理とは
問題管理とは、ITサービスにおける根本的な課題を特定し、解決するプロセスです。インシデント管理が応急処置を行うのに対し、問題管理は再発防止に焦点を当てます。
例えば、オンラインショッピングサイトで頻繁に商品が品切れになる問題があるとします。インシデント管理では、その都度在庫を補充しますが、問題管理では在庫管理システムの不具合や発注プロセスの問題点を分析し、恒久的な解決策を講じます。
問題管理の主な目的は、サービスの品質向上と安定稼働の実現です。根本原因を特定し、効果的な対策を実施することで、類似インシデントの発生を未然に防ぎます。これにより、ユーザーの満足度向上とビジネスへの悪影響の最小化が図れます。
効果的な問題管理の実施には、専門知識と適切なツールが不可欠です。SHERPA SUITEのような統合管理ツールを活用することで、問題の特定から解決までのプロセスを効率化できます。
インシデント管理と問題管理の具体的な違い
インシデント管理と問題管理の違いを具体的に理解するため、身近な例を考えてみましょう。
レストランで料理が遅れる問題が発生したとします。インシデント管理では、お客様に謝罪し、代替メニューを提案するなど、その場しのぎの対応を行います。一方、問題管理では、なぜ料理が遅れたのか、キッチンの効率や人員配置、調理プロセスなどを分析し、根本的な解決策を見出します。
インシデント管理は「今」を重視し、迅速な対応で顧客満足度を維持します。問題管理は「将来」を見据え、同様の問題が再発しないよう、システムや業務プロセスの改善を図ります。
両者は相互に補完し合う関係にあり、効果的なIT運用には両方が不可欠です。そのためには、双方を同時に管理し、いつでも状態が見れるようにする必要があります。SHERPA SUITEはRedmineを基盤にしており、インシデント管理プロジェクトと問題管理プロジェクトのように各々を同時に管理することができ、関連付けもクリック一つで実現できます。アラートなども自動登録され、インシデント管理で必要な俊敏な対応にも最適です。インシデント対応後の問題報告から改善方針などもチケットで確実に管理可能です。活用することで、より効率的なサービス改善が実現できるでしょう。
問題管理のメリットとは
解決までの時間を短縮
問題管理プロセスは、インシデントの根本原因を特定し、恒久的な解決策を見出すことで、解決時間の短縮を実現します。まず、発生した事象を「問題」として定義し、記録・分類・優先度付けを行います。次に、詳細な調査と診断を通じて根本原因を特定し、最適な解決策を策定・実行します。
このプロセスは、まるで医師が患者の症状を診断し、適切な治療法を見つけ出すようなものです。一時的な対症療法ではなく、病気の原因そのものを治療することで、再発を防ぎ、健康な状態を維持できるのです。
問題管理を通じて蓄積されたデータやナレッジは、組織の貴重な財産となります。同様のインシデントが発生した際、このナレッジを活用することで、迅速な対応が可能になります。結果として、サービスの安定稼働と業務効率化が実現し、顧客満足度の向上にもつながるのです。
効果的な問題管理の実践には、ITILに準拠したツールの活用が有効です。情報の一元管理や進捗状況の可視化により、担当者の負担軽減と解決時間の短縮が図れます。
コストのかかるインシデントを回避
問題管理プロセスは、コストのかかるインシデントを未然に防ぐ重要な役割を果たします。例えば、頻繁に発生するシステム障害を根本的に解決することで、その都度の対応コストを削減できるのです。
問題管理の各ステップを丁寧に実施することで、インシデントの再発を防ぎ、サービスの安定化を図ることができます。まず、問題を正確に識別し、詳細な情報を記録します。次に、問題を適切に分類し、優先度を設定します。そして、根本原因の調査と診断を行い、恒久的な解決策を策定します。最後に、解決策を実装し、問題をクローズします。
このプロセスを効率的に運用するには、専用のツールの導入が効果的です。ツールを活用することで、情報の一元管理や進捗状況の可視化が可能となり、対応の迅速化とコスト削減につながります。
生産性の向上
問題管理を組織に導入することで、生産性の向上が期待できます。まず、問題の根本原因を特定し、再発防止策を講じることで、同じ問題に何度も対応する無駄な時間を削減できます。これは、家の雨漏りを例にすると分かりやすいでしょう。その都度バケツを置くのではなく、屋根を修理することで根本的な解決を図るのです。
次に、問題管理プロセスを通じて蓄積されたナレッジを活用することで、新たな問題への対応時間を短縮できます。これにより、システム運用担当者は本来の業務に集中でき、組織全体の生産性向上につながります。
さらに、問題管理ツールを導入することで、情報の一元管理や進捗状況の可視化が可能となり、チーム間の連携がスムーズになります。結果として、問題解決のスピードアップと品質向上が実現し、顧客満足度の向上にも寄与するのです。
インシデントの根本原因を突き止める
ITILのサービスサポートにおける、「問題管理」をご紹介します。
問題管理はインシデント管理と混同されることもありますが、問題管理はあくまで原因究明を目的としたプロセスで、ITサービスをいかに迅速に復旧させるかを目的としたインシデント管理とは異なります。インシデントの根本原因を突き止め、再発を完全に防止するのが、問題管理の役割です。
問題管理にはある程度時間がかかります。再発防止策を施すためですが、するとインシデントを素早く解決し業務を続行することを支援するインシデント管理とは利害が対立する可能性があることがわかりますね。ITILの目的はサービスマネジメントを最適化することですから、ビジネスに対する影響を最小限に抑えることが必要です。このため、問題管理とインシデント管理の担当者は別に配置し、うまくバランスを取っていくことが重要だと言われています。
問題管理の4つのプロセス
問題管理プロセスの主要な活動は4つあります。
インシデントの発生をもたらした根本原因が不明な場合は、インシデントが解決されたとしても「問題」として認識されることになります。問題が認識されたら、発見された問題を放置しないために発見者や関連するインシデントの情報などを記録・分類しておくことが必要です。
分類においてはビジネスに対するインパクトと緊急度などを要素として考え、優先度を決定します。これは、対応が必要なものが複数ある場合に備えるためです。より優先度の高い問題から調査を開始し、根本原因を究明します。根本原因が判明した問題は「既知のエラー」として識別されます。
既知のエラーも記録しておき、恒久的な解決策を施し、再発防止を目指します。この時、恒久的な解決策も記録しておきます。問題の発生経緯なども含め、基本的な事項を詳細に記録しておくことで、次に同じようなインシデントが再び発生したとしても、迅速な解決が可能になります。既知のエラーが完全に解決されたことを確認したら、問題をクローズします。
問題管理はすでに発生したインシデントへの対策ですから、基本的に受身な活動です。しかし、ベンダーが提供する情報を基にしたり、インシデントのトレンド分析を行うなど、将来発生するであろうインシデントを予防する活動をしておくと、インシデントそのものの数を減らすことができます。そのため、「積極的な問題管理」こそが問題管理の真髄とも言えるでしょう。
問題管理ツールの選び方
問題管理ツールの種類と特徴
問題管理ツールは、ITサービス管理の要となる重要な存在です。その種類は大きく3つに分けられます。まず、Excelなどの表計算ソフトは、導入コストが低く手軽に始められるメリットがあります。しかし、複雑な問題の進捗管理には向いていないかもしれません。
次に、独自の文書管理システムは、自社の業務フローに合わせてカスタマイズできる利点があります。ただし、開発に時間とコストがかかる可能性があるので注意が必要です。
最後に、専用の有償ツールは、ITILに準拠した機能が充実しており、効率的な問題管理を実現できます。しかし、高価格になることもあり、予算の確保が課題となるかもしれません。
問題管理ツールを選ぶ際は、自社の規模や業務内容、予算を考慮し、最適なものを選択することが大切です。効果的な問題管理は、システムの安定性向上とコスト削減につながります。
おすすめの問題管理ツール比較
問題管理ツールの選択は、まるで料理人が包丁を選ぶようなものです。適切なツールがあれば、問題解決の効率が格段に上がります。
人気の問題管理ツールには、Jira、ServiceNow、Redmineなどがあります。これらは、問題の識別から解決までを一元管理でき、チーム間の連携を促進します。
各ツールには一長一短があるため、自社の要件に合わせて選択することが重要です。
問題管理ツール選定のポイント
問題管理ツールの選定は、まるで家族の新しい車選びのようなものです。家族の人数、用途、予算に合わせて選ぶように、組織のニーズに合ったツールを選ぶことが重要です。
選定のポイントは、まず問題管理プロセスへの対応です。問題の識別から解決までの7つのステップをカバーできる機能が必要です。次に、他システムとの連携も重要です。インシデント管理や変更管理とシームレスに連携できると効率的です。
ツール導入の効果も考慮しましょう。専用ツールを使えば、情報の一元管理や進捗状況の可視化が可能になり、サービス品質向上につながります。
導入コストや操作性、ベンダーのサポート体制も忘れずにチェックしましょう。自社の予算と必要な機能のバランスを取り、使いやすさとサポートの充実度を確認することで、長期的に活用できるツールを選べます。
「SHERPA SUITE」のようなツールを導入することで、使いやすく、また、より業務の効率化を目指すことができます。問題管理ツールを使っている方、また、これから導入を考えている方はぜひ参考にしてください。
SHERPA SUITEについてはこちら