業務を続行できない状態を解決する
今回はITILのサービスサポートにおける6つの運用プロセスの2つ目、「インシデント管理」をご紹介します。
前回ご紹介したサービスデスクはユーザーとIT部門とを密接につなぐことを目的とした機能組織でしたが、インシデント管理とは、ユーザーが業務を遂行できない状態を素早く解決し、業務を続行することを支援するプロセスのことです。
インシデントは「障害」などと訳されることも多いのですが、正確にはユーザーがITサービスを使えるべき時間に使えない状態のことです。つまり、問題やシステム障害が発生した時だけでなく、パフォーマンスの悪化やバッチジョブの進捗状況確認作業、ユーザーによるパスワード忘れなどもインシデントに含まれます。そしてインシデントに関する問い合わせは、サービスデスクを経由して届くわけです。 インシデント管理プロセスには、以下の6つの活動があります。
- 受付と記録の実施
問い合わせのあった、あるいは発生したすべてのインシデントを記録します。後に分析してITサービスの品質向上に利用します。
- 分類と優先度付けの実施
インシデントの分類・優先度などを決定します。分類はインシデントの種類やインシデントがもたらす影響の対象・範囲などに基づいて行い、対応に必要な基礎情報を特定します。
- ファーストヘルプラインによる解決
対応手順が決まっている問い合わせ(サービス要求)、単なる情報紹介や既知の問題などについては、障害対応履歴(ナレッジ)などを活用しながらファーストヘルプラインによる解決を試みます。この場合はエスカレーションする(上位のシステムに対応を依頼する。具体的にはスペシャリストへ依頼する)必要がないので、迅速な解決が可能です。
- エスカレーションによる解決
あらかじめ定めておいた基準やファーストヘルプラインを超えるインシデントについては、適切なエスカレーションを行い、調査・解決を図ります。なお、エスカレーションはSLA(サービス・レベル・アグリーメント。利用部門などに対して提供するITサービスの内容やレベルを保証する契約のこと)の制約の範囲内で行われます。
- インシデントの追跡とライフサイクル管理
インシデントを扱う担当者は、問題解決(クローズ)するまでの間、経過期間や調査状況、ユーザーに対するアップデート状況、解決が長引いた場合のエスカレーションなどについて管理を行います。
- クローズ
インシデントが解決されたら、速やかにユーザー・関係者に報告を行います。解決に至るまでの活動は記録し、過去事例として活用できるようにします。